自分で納得できる仕事を
続けて行きたい。
歯科医師というのは不思議です。本当は儲けさせて貰っているのに、患者さんは必ず「ありがとうございました」と帰っていきます。こちらが「ありがとうございました」の筈なのに「お大事に」です。
そんなことから常々感じるのは、「ありがとう」の言葉を絶対に裏切らない、今は長かったとか痛かったとか言われても何年かして未だに大丈夫、ホント良かったと思ってもらいたい、そんな仕事をする。こんな気持ちを大切に診療しています。
バイク屋のおやじさんで、尊敬している人がいます。相手に解ろうが解るまいが自分にとっていつも恥ずかしくない、悔いの残らない仕事をする。儲けなんかにならないのに海外から輸入したバイクを、部品一つ一つまでばらばらに分解し「日本」という国の気候、風土や交通事情に合うように調整し、オイルなども粘張度の合ったものに交換し、自分の目で確かめた上で確実に組み上げていく。そうやってお客さんの手に渡るバイクは一切の説明も、価値の上乗せも無い。
ある時「私は新車の販売をもう止めました」と伺った。理由を聞けば、「自分のところで新車を買って下さったお客さんは、次に買い換えるまで大体10年ぐらいは乗られるが、自分はもういい年なので、後10年そのお客さんがバイクを手放すまで面倒を見て差し上げられるかどうか解らない。だから、生活は苦しくなるが新車の販売を止めて、車検とかの整備だけを続けて行きます」と。あっけらかんと笑いながら話すが、ここまで自分の仕事に徹した人はいない。
業種は違うが、この親父さんを目標に、いつか並びたい、いつか越えたいと、日々の診療は自分との真剣勝負です。だから、自費診療、保険診療共にレベルを維持し、材料も選んで良い物を使い、技工士さんにもうるさく注文する。こうやって、自分で納得できる仕事を続けて行きたい。